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2024年 民事訴訟法 広島大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 民事訴訟法 広島大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

広島大学法科大学院2024年 民事訴訟法

(1)
 地方裁判所を第一審とする訴訟は、原告が裁判所に訴状を提出することによって開始される(134条1項)。裁判所(裁判長)は、訴状が法定の形式を満たしているか、訴訟要件に欠ける点がないかなどを審査する(137条)。訴状が適式であれば、訴状が被告に対して送達される(138条1項)。これにより、訴訟係属が生じる。裁判長は、口頭弁論期日を指定し、当事者を呼び出す(139条)。被告は、最初の口頭弁論期日までに、訴状記載の請求原因事実に対する認否や自己の主張を記載した答弁書を提出する(161条)。
 口頭弁論期日においては、当事者は、自己の主張を述べ、相手方の主張に対する認否や反論を行う。これは、当事者が主張した事実のみを判決の基礎とし、当事者の主張しない事実を認定してはならないという弁論主義第1テーゼに基づく。裁判所は、事案解明のために必要と認めるときは、当事者に対し事実上及び法律上の事項について質問し、又は立証を促すことができる(釈明権、149条)。争点が整理された後、証拠調べ手続が行われる。証拠調べは、争いのある事実の存否を判断するために行われ、人証(証人尋問、当事者尋問)、書証、検証などが主な方法である。裁判所は、当事者の主張立証に基づき、心証が形成され、裁判をするのに熟した時に終局判決を下す(243条1項)。判決は、当事者に送達され(255条1項)、判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に控訴の提起がなければ(285条)、判決は確定する。

(2)
 双方審尋主義とは、口頭弁論において、対立当事者双方にそれぞれの言い分を主張する機会を平等に保障しなければならないという原則である。これは、公平な裁判を実現するために要請される。

(3)
 裁判上の自白とは、口頭弁論期日または争点整理手続期日において、相手方の主張と一致する、自己に不利益な事実を認める旨の陳述をすることをいう(民訴法179条参照)。
 その成立要件は、①事実に関する陳述であること、②口頭弁論期日または争点整理手続期日における陳述であること、③相手方の主張と一致する、自己に不利益な事実を認める陳述であること、である。①については、証拠と同様の役割を有する間接事実や補助事実まで裁判上の自白の成立を認めると自由心証主義(247条)を害する恐れがあるため、事実とは訴訟物の発生、消滅、障害、阻止等を判断するのに直接必要な事実である主要事実を意味する。また、③については、自己に不利益とは基準の明確性の観点から、相手方が証明責任を負っている事実をいう。
 裁判上の自白が成立すると2つの効果が生じる。第一に、裁判所は自白された事実をそのまま判決の基礎としなければならず、これに反する事実認定をすることはできない。これは、弁論主義第2テーゼの現れである。第二に、自白をした当事者は、原則としてその自白を撤回することができない(当事者に対する拘束力)。これは、自白の内容に対する相手方の信頼を害するものとして、信義則(2条)に反するためである。ただし、例外的に、相手方の同意がある場合、または自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいてされた場合、刑事上罰すべき他人の行為により自白がなされた場合(338条1項5号参照)には、撤回が許される。これらの場合、当事者の意思の尊重や相手方の信頼保護という裁判上の自白の趣旨が妥当しないためである。

(4)
 確定した終局判決には既判力が生じる。既判力とは、確定判決における判断内容が、後の訴訟において当事者および裁判所を拘束する効力をいう(114条1項)。
 既判力の正当化根拠は、手続保障の充足に基づく自己責任にあるところ、当事者が争った訴訟物については手続保障が与えられていたといえ、これについては自己責任を問える。そこで既判力の客観的範囲は、「主文に包含するもの」、すなわち判決主文で示された訴訟物たる権利または法律関係の存否に関する判断に限定される。また、当事者は事実審の口頭弁論終結時までは訴訟資料を提出することができ、かかる時点まで手続保障が及んでいるため、既判力の時的範囲は事実審の口頭弁論終結時である。
 本問において、前訴はXY間の甲土地所有権確認訴訟であり、Xの所有権の存在を確認する判決が確定している。したがって、前訴の事実審口頭弁論終結時においてXが甲土地の所有権を有することについて既判力が生じている。
 では、後訴に対して、前訴の既判力は作用するか。
 この点、前訴と後訴の訴訟物が、同一、先決、矛盾のいずれかの関係にある場合前訴既判力は後訴に作用すると考える。
 後訴は、YX間の甲土地所有権確認訴訟であり、その訴訟物はYの甲土地所有権の存在である。前訴の訴訟物(Xの所有権)と後訴の訴訟物(Yの所有権)は異なるし、Xの所有権の存否がYの所有権の存否の前提とはなっていないため、先決関係にもない。しかし、一つの土地について、XとYがそれぞれ排他的な所有権を有することは、一物一権主義との関係であり得ない。したがって、後訴においてYの所有権の存在を認めることは、前訴で確定したXの所有権の存在と論理的に矛盾する判断となる。
 このような場合、前訴判決の既判力は、後訴において、前訴の事実審の口頭弁論終結時までの事情によって、YがXの所有権の存在を争うこと、および自己の所有権の存在を基礎づける主張・立証を行うことを許さないという形で作用すると解される。

(5)
 重複起訴の禁止とは、「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない」とする原則である(142条)。同一当事者間で、同一の審判対象について、既に訴訟が係属しているにもかかわらず、重ねて訴えを提起することは許されない。
 この制度の趣旨は、①審理の重複による訴訟不経済の回避、②被告に重ねて応訴の負担を強いることの防止、③同一事件について矛盾した判決が下される危険の回避にある。後訴が重複起訴に該当する場合、裁判所は後訴を不適法として却下しなければならない。

(6)
 共同訴訟人間での証拠共通の原則とは、共同訴訟において、共同訴訟人の一人が提出した証拠又はこれに対して提出された証拠は、他の共同訴訟人が特にこれを援用しなくても、当然に、他の共同訴訟人と相手方との間における事実認定においても共通の資料となるという原則をいう。
 かかる原則を認めることは、他の共同訴訟人が申し出ていない証拠が事実認定に使用されることを認めることになる点で、職権証拠調べの禁止を内容とする弁論主義第3テーゼに反するとも思える。しかし、共同訴訟人の一人の証拠申出により、かかる第3テーゼは充足されており、その結果の取り扱いとして当該証拠からいかなる事実を認定するかは、裁判官の自由な心証形成に委ねられている(247条)。そして自由心証主義のもとでは、一つの歴史的事実の心証は一つしかあり得ず、また、共同訴訟では裁判官の心証は通常共通になされる。したがって、民事訴訟法に明文の規定はないが、弁論主義を形式的に適用した場合の不都合を回避し、訴訟の実質的公平や真実発見、訴訟経済、共同訴訟における判決の統一を図るために、解釈上認められている。

以上

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