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2024年 憲法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 憲法 同志社大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/4/2024

第1 設問1

The Law School Times【ロー入試参考答案】

同志社大学法科大学院2024年 憲法

1. 一部違憲の類型に関する判例としては、まず、最判平成20年6月4日(国籍法違憲判決)が存する。当該判例は、改正前国籍法3条1項が「嫡出子たる身分を取得した子…は、…法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる」と規定しているところ、同項が準正子と内縁関係にある非嫡出子との間で不合理な差別が生じており、憲法(以下、略)14条1項に違反するのではないかが争われた事案である。

 最高裁判所は、改正前国籍法3条1項の目的を父母の婚姻による準正によって、日本国社会との密接な結びつきが生じ、国籍取得を認めるに足る状況が認められることから、準正を要件とする点と認定した。そして、制定当時の社会通念や社会的状況の下では、準正を国籍取得要件とすることは、目的との関係で合理的関連性があると評価した。もっとも、近年の国際化の発展に伴った交際的交流の増大及び国際規約及び児童の権利に関する条約に批准したことを考慮して、準正を国籍取得要件とすることは、上記立法目的との関係において合理的関連性を見出すことが難しくなっていると評価とし、準正を要件とする文言に限り、14条1項に違反すると判示した。

2. 次に、最判平成14年9月11日(郵便法違憲判決)がある。当該判例は、改正前郵便法68条1項が郵便事業庁長官に対して損害賠償責任を負う場合を限定列挙した上で、改正前同条2項がその賠償責任の額につき制限を加えていたことが、憲法17条に違反しないかが争われた事案である。

 最高裁判所は、「郵便の役務をなるべく安い料金で、…公平に提供する」べきとの目的ないし性質は、普通郵便と書留郵便とで異なるところはない。そして、このような目的を達成するためには、郵便業務従事者の軽過失による不法行為に基づき損害が生じたにとどまる場合には、国の損害賠償責任を免除ないし制限することもやむを得ないとした。一方で、書留郵便について、郵便業務従事者の故意又は重大な過失による不法行為に基づき損害が生ずるようなことは、ごく例外的な場合にとどまるはずであるから、このような場合に損害賠償責任を免除ないし制限しなくとも、上記目的を達成することができると評価した。さらに、当該場合に損害賠償責任を認めなければ、国民の書留制度に対する信頼を損なうこととなり、却って目的達成を妨げると評価した。そのため、同法のうち、故意及び重過失による不法行為をも含むという意味に限り、違憲判決を下した。

3. まず、41条は、「国会は、…唯一の立法機関である」と定め、国会による立法以外の実質的意味の立法は、憲法上特別の規定がある場合を除き、許さない旨の原則(国会中心立法の原則)を定める。一部違憲判決は、裁判所が法令を解釈した上でその一部分につき違憲との判断を下す点で、実質的な立法作用といえ、三権分立の観点から問題が存する。もっとも、法令の解釈に際して、立法者の合理的意思を踏まえるものと解すれば、法令解釈に裁判所の意思が介在する余地は小さいものといえ、上記問題点は生じないこととなる。

 次に、例えば、上記国籍法違憲判決の事案では、全部違憲判決を下せば、原告は国籍付与の根拠規定自体が無効となってしまい、国籍の付与を受けられる余地が無くなってしまう。そのため、一部違憲判決は、訴訟当事者の求める権利救済に対して柔軟な判断を下せるという意味で、直接的な救済を行うことができるという利点が存する。

第2 設問2

1. 警察は、捜査の過程でXの承諾により採取した同人のDNA型情報を無罪判決確定後も保有(以下、本件処分とする。)している。そこで、Xは、人格権、すなわち自己のDNA情報をコントロールする利益が侵害されたことを理由に、自己のDNA型に関するデータの削除請求をすることが考えられる。

2. 上記利益は、憲法上保障される利益にあたり、本件処分による当該利益に対する侵害が認められれば、憲法上の制約と評価できる。

⑴ 「幸福追求…権」(憲法(以下、略)13条後段)は、個人尊重の原理と人権のインフレ化を防ぐ観点から、人格的な生存に不可欠の権利利益・自由をいうと解する。

⑵ 確かに、DNA型情報は、それのみを以て、直ちに私生活又は個人の人格、思想、信条及び良心等個人の内心に関する情報となるものではないため、秘匿性の高い情報とはいえないとも評価し得る。しかし、DNA型情報は、万人不同終生不変の性質を有し、当該情報の利用次第又は他の情報と組み合わさることにより、私生活や内心に関する情報となり得る。そのため、当該情報は、秘匿性の高い情報と評価すべきである。そこで、当該情報をコントロールする利益は、人格的な生存に不可欠の利益といえる。したがって、当該利益は13条により憲法上保障される。

 そして、本件処分は、収集したDNA型情報を保管及び捜査の範囲で利用しているにすぎず、これを公開するものでないことから、上記利益を侵害するものではないとも思える。しかし、上記の通り、DNA型に関する情報は、非常に秘匿性の高い情報である。加えて、当該情報を管理するに際し、厳格な手続や罰則が法定されているわけでもなく、当該情報が漏洩する危険性は十分に存する。このような事情に鑑みれば、当該利益に対する侵害があると評価できる。

⑶ よって、上記侵害は、憲法上の制約にあたる。

2. 13条による保障は無制約のものではなく、「公共の福祉」(13条後段)による制約に服する。そこで、「公共の福祉」によるものとして認められる場合には、上記制約は正当化され、削除請求は認められないと解する。

⑴ まず、上記の通り、自己のDNA型情報をコントロールする利益は、人格的な生存に不可欠なものであるため、重要な利益と評価できる。
 次に、上記制約は、DNA型情報を保管及び捜査の範囲で利用しているにすぎず、当該情報を公開するものではない。そのため、その態様が強いものとは評価できない。
 以上の事情に鑑みれば、①目的が正当かつ重要で、②目的と手段との間に実質的関連性が認められる場合に限り、上記制約が正当化されると解する。

⑵ まず、本件処分の目的は、DNA型情報を捜査に利用することを以て、真実を発見する点にあると考えられる。真実発見は、国家が追求することの許される目的といえるため、正当な目的といえる。そして、真実発見は、国民の平穏な生活や幸福追求権に資する。そこで、上記目的は重要なものといえる(①充足)。
 次に、DNA型情報は、万人不同終生不変の性質を有する点に鑑みれば、捜査資料として非常に重要なものであり、真実発見に非常に資するものであるため、手段と目的との間に適合性が認められるとも思える。しかし、本件は、Xについて無罪判決が確定していることから、裁判上真実は既に明らかとなっており、本件処分が真実発見に資する余地はもはやない。そこで、手段と目的との間に適合性が認められず、実質的関連性を欠くといえる(②不充足)。

⑶ したがって、上記制約が正当化されない。

3. よって、Xによる上記請求は認められる。

以上

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