広告画像
2022年 憲法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】
後で読むアイコンブックマーク

2022年 憲法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/22/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

神戸大学大学法科大学院2022年 憲法

1. 本条例16条1項1号と19条が暴走族に属するCらがB公園で集会する自由(本件自由)を侵害し、憲法21条1項・31条に反し違憲となるか。

2. 「集会」とは多数人が共通の目的をもって一定の場所に集まることを意味する。暴走族に属するCらはいわゆる声出し等の示威行為を行う目的で一時的にB公園に集まっていることから「集会」に当たる。したがって、本件自由は21条1項によって保障される。

3. 本条例16条1項1号は「何人」も、「B公園において」、「特異な服装をして、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会を行うこと」を禁止している。また当該禁止の違反に対しては同19条が刑事罰を設けることによって担保している。したがって、本条例16条1項1号と19条は本件自由を制約している。

4. 形式的正当化

⑴ Cの弁護人は「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会」(本条例16条1項1号)の文言が不明確である、そして当該規定に違反した場合に本条例19条で罰せられる点が刑罰法規としての明確性を欠くとして明確性の原則に反することに加えて、 規定の適用範囲が過度に広範になり本来適用対象となる集会以外のB公園で集会をしようとする者に対して同規定の適用を受けることを恐れてB公園での集会を控えるという萎縮的効果を与えるとして同規定が過度に広範ゆえに無効であり 21条1項・31条に反すると主張している(①②主張)。
 これに対して、まず、暴力団組員であるCが「何人も」(本条例16条1項1号)に該当することは明らかであり、Cの行った集会は、明らかに「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会」(本条例16条1項1号)にあたるから、Cに、本条例の不明確性ないし過度広汎性の主張適格はないとの反論がある(⑤主張)。もっとも、不明確な文言によって表現行為が規制されている場合には、早期に萎縮効果を除去すべき要請が強い。そこで、表現行為を規制する法条の不明確性ないし過度広汎性については、明らかに規制対象となる表現行為を行ったものであっても主張適格を有すると解する。よって、⑤主張は失当である。(2) 表現行為への萎縮的効果を避けるべきという要請と刑罰権告知機能を十全に果たすべきという要請から、  明確性の原則に反するかは通常の判断能力を有する一般人の理解において具体的場合に当該行為がその法令の適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめる基準が読みとれるかどうかにより判断される(徳島市公安条例事件)。

⑶ 本条例16条1項1号は「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会」と定めるのみで下位基準やどのような集会がこれに該当するかの例示列挙がない。かかる規定の文言のみでは、例えば、ゾンビの愛好家らによるコスプレ・イベントやドクロがプリントされたシャツを着て戦争の怖さを訴える平和集会なども禁止事項となりうる。したがって、かかる規定からはどのような行為がかかる要件に該当するかの基準を読み取ることはできないから、明確性の原則に反するのが原則である。

⑷ もっとも、法令の名称や法令全体の趣旨などを考慮して、規定の要件を合憲限定解釈できる場合は規定の不明確性を払拭できることから例外的に明確性の原則に反しない。
 本条例はB公園を暴走族から守る条例という名称である。1条は、本条例の目的が「B公園での暴走族の集会及び示威行為等を規制」であることを定めている。そうすると、一般人は、本条例の趣旨はB公園での暴走族による集会や示威行為から市民の生活の安全や安心を確保する点にあると理解でき、「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会」は、B公園で市民の生活の安全や安心を脅かすおそれのある暴走族やそれに類する者達の集会というように限定解釈することが可能である。よって、本条例16条1項1号の規定は例外的に不明確が払拭され明確性の原則に反しない。
 また、上記のように、本条例の規制行為の主体は暴走族やそれに類する者達であることは、一般人にも読み取れるため、「何人も」とは、そのような者達と解することができるため、過度の後半生の原則に反することもない。

⑸ 以上より、21条1項・31条には反しないから検察官の④主張の通りである。

5. 実質的正当化

 集会の自由の憲法上の意義について、集会は国民が様々な意見情報等に触れ合うことにより自己の思想や人格を形成・発展させ、また、相互に意見情報等を伝達・交流する場として必要であり、さらに対外的に意見を表明する手段である。したがって、集会の自由は重要な基本的人権として特に保障されるべきである(成田新法事件)。本件自由についても特に保障されるべきであるとして権利の重要性は高いものとも思える。しかし、本件自由における集会は情報等の交換や思想の相互表明といった目的ではなく「声出し」といった示威行為をすることを目的とするものである。そのため、同判例で問題となった集会の自由とは性質を異にし、同程度に重要であるとはいえない。
 また、たしかにB公園は本来的には国民の表現の場として供されるべき場所としていわゆるパブリックフォーラムではあるが、検察官の③主張の通り公道上などとは違いB公園はA市が管理する場所であり、そこでの活動に対する規制権限についてA市は広範な裁量を有するのであるから、いわゆる指定的パブリックフォーラムとして公道などの伝統的パブリックフォーラムと同様の審査な基準を採用するのはた妥当ではない。ここで、いわゆる表現内容規制は当該対象が伝えようとするテーマや思想内容に着目して規制するものであり、このような規制は思想の自由市場に特定の思想が流出しないよう国家権力が恣意的に操作するおそれがあることから違憲の推定が働き厳格審査に服するものといえる。、しかし、本条例は、内容いかんを問わず、その態様によって、集会を禁止しているから、特定の表現場所を規制するにとどまるいわゆる表現内容中立規制であるといえ、厳格審査には服さない。
 また、本条例による禁止行為の指定はB公園に限って集会を禁ずるものであるところ暴走族は公園でしか集会できないという性質の集団ではないから、例えば他の公園などで集会をする余地がある。
 したがって、①目的が重要で②手段が目的との関係で実質的関連性を有する場合に本条例は合憲となる。

6. ⑴ 本条例16条1項1号と19条の目的はB公園での暴走族による集会における示威行為を規制することによって家族連れや観光客などがB公園を安心して利用できるようにすることである。A市の中心部であるB公園は大正初期に開設された公園で、現在は、A市が管理している。園内には大きな広場があり、大正時代に建設された歴史的建造物もある。B公園への出入りは誰でも自由であり、市民の憩いの場所として、休日などには、子供連れの家族や環境客で賑わっており周辺住民の心の拠り所といえ、また、公共的な価値も非常に高い場所といえる。そして、園内の広場や道路ではコスプレ・イベントや様々な政治的集会も頻繁に開催されていることから政治的意思決定に関与しうる場所としての価値も有する。
 したがって、B公園で幸福追求(13条)を図ろうとする家族連れや観光客などが安心してB公園を利用できるようにする目的は重要である(①)。

⑵ 数年前より、A市で活動を開始した暴走族集団が、頻繁に円陣を組んで威圧的な雰囲気のもと、大声で自己紹介などをする、いわゆる「声出し」をB公園内で行うようになった。それ以降、B公園は危なく、雰囲気の悪い場所であるとの評判がたち、子供連れの家族や観光客がB公園を訪れるのを避けるようになった。
 そこで、「特異な服装をして、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会を行うこと」を禁止することによって、これに該当する暴走族がB公園で集会することが無くなり子供連れの家族や観光客がまたB公園を訪れるようになることが期待できる。また当該禁止の違反について罰則により担保している点も最大「6月以下の懲役」(本条例19条)という重い刑が予定されていることから、違反しようとする者達に十分な心理的抑制を加えることができ、実効性が認められるといえる。したがって、手段適合性が認められる。
 上記の通り、当該要件の不明確性については本件条例の名称や法令全体の趣旨に鑑みてその対象を暴走族やそれに類する者達の集会に限定することが可能であるし、また暴走族以外の暴力団や反グレなどによる集会も今後B公園で行われる可能性があることから、当該要件に該当する場合にかかる集会を禁止する手段としての必要性が認められる。したがって、目的との関係で手段が実質的関連性を有する(②)。

7. 以上より、本条例は合憲である。

                                         以上


おすすめ記事

ページタイトル
キャリア

法律事務所EXPO powered byカケコム 開催決定!

#ロースクール
ページタイトル
ロースクール

弁護士を目指す、フランス留学中の大学生が綴る留学&司法試験挑戦記 Vol.1

#ロースクール
ページタイトル
キャリアインタビュー

伝統と変革。テクノロジーと協働し、顧客の感情と向き合う弁護士を育てる。Authense法律事務所代表・元榮太一郎弁護士インタビュー【PR】