11/22/2023
The Law School Times【ロー入試参考答案】
東北大学法科大学院2021年 商法
第1問
事業譲渡において、本来譲渡会社は、譲渡した事業に相当する対価を受け取るはずである。しかし、当事者間に資本関係などの特別な関係があれば、不相当に少ない、あるいは多額の対価が設定されることがありうる。また、優良資産と一部の債務だけを移転させる事業譲渡の場合、たとえ対価が適正なものであっても、残存債権者に実質的な引当財産が減少することになる。以上のようなリスクから残存債権者の保護を図る必要があるため一定の場合にかかる請求が認められるのである。
第2問
資本金の額が減少した場合、その分だけ剰余金が増加し、会社財産が株主に流出する可能性が高くなるため、会社債権者の利益を害する可能性がある。そこで、資本金の減少に当たっては、会社債権者の保護のために、債権者意義手続が求められているのである。
第3問
種類株式は、剰余金配当の優劣や議決権の有無など、その内容や発行数によっては既存株主に重大な影響を及ぼしうるため、既存株主が不利な影響を受ける場合には、定款変更の手続きによってこれを阻止する機会が与える必要があるからである。
第4問
X株式会社は、株主総会に来場した株主の約半数を総会会場に入場させず、その議決権行使の機会を奪っている。そのため、同総会における決議は、決議の方法が法令(105条1項3号参照)に違反するとして、決議取消事由(831条1項1号)が認められる。
なお、議決権の行使は株主の中核的権利であり、これを認めなかったことは、たとえ議決権を行使できなかった株主が少数であったとしても、重大な違法といえるため、裁量棄却(831条2項)の余地はない。
第5問
一般に、役員相互の特殊な関係から会社に提訴懈怠のおそれがあることから、会社・株主の利益を保護するために、株主代表訴訟制度(847条)が認められている。このような提訴懈怠のおそれは、親子会社関係がある場合、当該親子会社の役員間にも認められる。そのため、最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴えが認められている。
以上