5/12/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
同志社大学法科大学院2025年 憲法
第1問
1. 国の法令と同一の目的で、法令により規制が加えられていない項目について規制する条例は合憲か。
2. 徳島県公安条例判決は、自主条例が「法律の範囲内」(憲法94条)といえるかは、両者の対象事項と規定文言を対比するだけではなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決せられるとする。
そして、①国の法令中に明文規律がない場合でも、それが当該事項についていかなる規制も許さない趣旨であれば、当該事項を規制する条例は法令に違反する、②当該事項について国の法令と条例とが併存する場合でも、ⅰ両者の目的が異なり、かつ、条例の適用により国の法令の目的・効果が何ら阻害されないとき、及びⅱ両者の目的が同一であっても、国の法令が地方の実情に応じた別段の規制を容認する趣旨であるときは、条例は法令に違反しないとしている。
3. ある事項について国の法令と条例とが併存する場合で、両者の目的が同一の場合であっても、国の法令が地方の実情に応じた別段の規制を容認する趣旨であるときは、条例は合憲・適法である。これに対して、一律に規制を及ぼす趣旨である場合には、条例は違憲・不適法である。
第2問
1. 尊属殺人罪の法改正は、刑罰について、199条の殺人罪と尊属殺人罪とで罪の重さを区別している。これは、憲法14条1項に反し違憲か。
2. まず、法適用が平等であっても法内容が平等でなければ個人の尊厳が無意味に帰するから、「法の下」には法適用の平等のみならず法内容の平等をも含む。
3. 次に、尊属殺人罪の規定は、子が尊属を殺害した場合に199条の殺人罪よりも法定刑を加重するものだから、子が尊属を殺害した場合と、尊属以外の者を殺害した場合とを別異に取り扱っている。
4. 各人には事実的・実質的差異がある以上、「平等」とは合理的区別を許容する相対的平等を意味すると解する。そのため、事柄の性質に即応した合理的な別異取り扱いは、14条1項に反しないと考える。では、上記別異取扱いについて、合理的理由は認められるか。
ア 差別の合理的理由の審査の厳格度は、事柄の性質によって変わりうる。
確かに、法律は国会の立法裁量に委ねられているから、違憲審査の際に立法裁量を尊重する要請を無視することはできない。
しかし、どの重さの刑罰を受けるかは、被告人がどれくらいの期間で社会に戻れるかにかかわってくるため、重要な法的地位といえる。
よって、本件法改正の違憲審査における立法裁量は限定されると考える。そこで、①立法目的が重要であり、②手段が立法目的との間で実質的関連性を有する場合には合憲とする。
イ 本件改正の目的は、尊属を卑属またはその配偶者が殺害することが一般的に高度の社会的道義的非難に値するから、かかる行為を通常の殺人罪よりも厳重に処罰し、もってこれを強く禁圧しようとする点にある。このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値するといえる。よって、目的は重要である。
判例では、尊属殺の法定刑が死刑または無期懲役刑に限定されていることから、あまりにも厳しく、手段相当性が認められないから違憲としていると考えることができる。本問では、死刑又は無期若しくは7年以上の拘禁刑とする法改正であった点で判例とは事案を異にする。7年以上の拘禁刑は、199条の殺人罪と比較して下限が2年長いだけであるから、手段の相当性が認められると考える。
⑸よって、14条1項に反しない。
他方、近親殺の場合の目的は、家族観を重視し近親者を敬うべきだという考えから、199条の殺人よりも刑を重くすることにあると考えられる。近年は多様性が認められつつある中で家制度の文化も廃れてきており、さまざまな家族観が存在している。その中で、近親者を敬うべきとする目的は重要とは言えない。よって、14条1項に反し、違憲である。
以上