6/19/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
東北大学法科大学院2024年 憲法
問題1
小問1
判例は、検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上で、不適当と認めるものの発表を禁止することをいうとしている。
その上で、出版物の頒布等の事前差止めは、非訟的要素を含むため行政権が主体となっていると言いうるものの、個別の紛争について被保全権利の存否、保全の必要性の有無を裁判所が審理判断するため、検閲にあたらないとの判断を示したものと評価できる。
小問2
判例は、出版物の頒布等の事前差止めは、「厳格かつ明確な要件」のもとにおいてのみ許容されるとの判断を示している。
その根拠は、事前差止めについては、表現の自由市場に出ることを制限されること、予測に基づくものとなり事後規制の場合よりも広汎にわたりやすく濫用のおそれがあること、実際上の抑制的効果が事後規制の場合よりも大きいことにあると解される。
問題2
小問1
判例は、刑法230条の2第1項にいう「事実」が真実であることの証明がない場合であっても、真実であると誤信したことに、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立しないという立場に立っている。
小問2
「表現」とは、人の思想を外部に表明することをいい、、「表現の自由」(憲法21条1項)に基づく真実の公表は、積極的に正当な行為と評価されるべきであり、社会的倫理規範に反さず違法といえないから、230条の2は違法性阻却事由を定めたものであり、故意(刑法38条1項)の対象であると解する。
また、本条は、名誉の保護と「表現の自由」の保障の調和の見地からおかれた訴訟法的規定であると解するところ、「真実であることの証明があったとき」というのは、裁判段階の話であり、行為時の話である実体法の要件に引き直すと、証明可能な程度に真実であることをいうと解される。
そこで、「事実」が真実であると誤信したことに、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、違法性の意識を喚起できないので、犯罪事実を認識しているとはいえず、故意が阻却されると解する。
判例の立場はこのように解することができるから、表現の自由の保障という観点から、妥当である。
以上