7/22/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
神戸大学大学法科大学院2022年 行政法
問1
1. 「処分」(行訴法3条2項)とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。具体的には、公権力性と法効果性から判断するが、紛争の成熟性も考慮することがある。
2. 特商法 12 条の 2による根拠提出の要求は、当該法令を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、公権力性を有している。
3. また、特商法(以下、法)12 条の 2による要求は、これを拒めば「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」(法12条)に該当するものとみなされ、結果として「第十二条......の規定に違反し若しくは前条第一項各号に掲げる行為をした場合」(法15条1項)として業務の停止を受ける恐れがあるため、法効果性もあるとも思える。
しかし、上記表示に該当したとしても、直ちに業務停止命令を受けるのではなく、法14条の違反又は当該行為の是正のための措置を受けるに留まることもあれば、そもそも「通信販売に係る取引の公正及び購入者若しくは役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき」に当たらないとして処分を受けない場合も有り得るため、相当程度の確実さをもって不利益を生じるとはいえない。
また、15条による処分を受けた者は、業務停止命令を受けた後に当該命令の違法を理由として取消訴訟を提起することも可能であり、根拠提出要求それ自体に処分性を認めその時点における救済を認めなくても、後続の処分において救済の途が存する以上、紛争の成熟も未だないといえる。
4. 以上より、処分性は認められない。
問2
ア)誤っている
法66条1項による調査に関しては、調査に応じない場合にはその者に対する罰則(法71条)が定められていることから、完全な任意調査ということはできない。一方で、法により相手の抵抗を実力で排除して調査する権限が認められていない。よって、法66条1項による調査はいわゆる間接強制捜査に該当するものであり、犯則調査ではないため、令状の取得により実力行使及び臨検が可能と解することはできない。
イ)誤っている
行政代執行は、「法律により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるとき」にのみ認められるが、書類提出義務を代替的作為義務と解し立ち入り及び一般的探索を実質的に可能とすること不可能である。
ウ)正しい
行政刑罰の手続きには原則として刑事訴訟法が適用されることから、検察官への相談は可能である。
問3
1. 行手法3条3項より、地方公共団体の機関がする処分のうち根拠が条例または規則におかれているもの、行政指導については行手法の適用除外とされている。
2. 本件で、行政指導は行手法の適用除外とされているため、兵庫県行政手続条例の適用を受ける。一方で、営業停止命令は処分であるが、根拠は法令である特定商取引法によりなされるものであるため、行手法の適用がある。
以上