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2022年 刑法 愛知大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 刑法 愛知大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

愛知大学法科大学院2022年 刑法

第1 甲の罪責

1. 甲がVをトランクに閉じ込めた行為に監禁罪(刑法(以下、略)220条)が成立しないか。

⑴ 「監禁」とは、人を一定区域からの脱出を不可能又は著しく困難にして人の場所的移動の自由を奪うことをいう。甲はVを挟んだ敷布団に挟んでロープで厳重に縛り、A車のトランクに入れている。そのため、VはA車のトランクという一定区域からの脱出が不可能になっている。そのため、甲はVを「監禁」している。

⑵ 監禁罪の保護法益は場所的移動の可能的自由であるから、被害者に移動する意思がなくても監禁罪は成立する。

⑶ 故意も問題なく認められる。

⑷ よって、甲に監禁罪が成立する。

2. 甲のVを挟んだ敷布団を車に運び入れ運搬させた行為(以下、第一行為)にVに対する殺人罪(199条)が成立しないか。

⑴ まず上記行為に殺人罪の実行行為性が認められるか。

ア 実行行為とは、構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為をいうため、かかる危険性が惹起した時点で実行行為性が認められると解する。そこで、①第一行為が第二行為を行う上で必要不可欠であるか、②第一行為の後、第二行為を行うに際して特段の障害がないいか、③第一行為と第二行為が時間的場所的に近接しているか、といった点を考慮して、第一行為の時点で既遂結果発生の危険性があったかどうかを判断する。

イ 甲の計画では、第一行為の後、Vを布団ごと山奥に捨てて(以下、第二行為),寒さの中凍死するなり,野犬に噛まれるなりで殺害する予定であった。真冬の山奥に拘束状態で放置すれば非常に高い確率で人は志望するところ、確実かつ容易にVを山奥に捨てるためにはVを反抗できないように拘束し運搬することが必要である。そのため、第一行為は第二行為を行う上で必要不可欠であった。
 また、犯行現場は人気のない山奥であり、一度拘束状態にあるVを山奥に運び込めば、Vからの抵抗を受けることや第三者からの妨害発見等がなされるおそれも低くなり容易にVを山奥に捨てることができる。そのため、第一行為の後、第二行為を行うに際して特段の障害がないといえる。
 そして、甲宅と山奥では場所的に離れてはいるものの車で30分と時間的に近接しており、時間的場所的近接性も認められる。

ウ 以上の事情を考慮すれば運搬した時点でVが死亡する危険性が惹起されたといえ、上記行為に殺人罪の実行行為性が認められる。

⑵ 次にVはトラックの運転手の追突という事情によって死亡しているところ上記行為とVの死亡結果との間に因果関係は認められるか。

ア 因果関係の存否は、帰責の範囲を適正にするため、条件関係の存在を前提に、行為に含まれる危険が結果へと現実化したか否かで判断する。

イ これを本件についてみると、甲がVを車に運び入れ運搬しなければVをいれた車にトラックが追突しVが死亡することはなかったのであるから上記行為とVの死亡に条件関係があるといえる。
 Vの死因は第一行為によるものではなくトラックの追突による全身打撲である。しかしながら、車のトランクは後ろから衝突されたときにつぶれるように設計されているため、トランクに人を監禁した場合、後ろから衝突されたときにその人が死亡する危険が十分にある。また、乙の尿意によりA車を走行していた片側1車線の県道の道路左側に寄せて停車させていたところ、山奥の夜という先が見えづらい環境で1車線の狭い道路に停車させていれば、左側に寄せていたといえども後続の車に追突されることは異常ではない。後続の車が猛スピードで前方不注意であったとしてもこのような見通しの悪い環境で停車させていれば追突されることも異常とまではいえない。
 これらの事情を考慮すると上記行為に内在する追突事故が起きた場合にトランク内のVが全身打撲により死亡する危険性がVの死亡という結果へと現実化したといえ上記行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

⑶ 次に甲はVを山奥に捨て凍死や野犬に食われて死亡するつもりでいたのに対し実際はトラックによる追突事故で死亡している。そのため、予見していた因果経過と実際の因果経過は異なるが、この時にも甲にVに対する殺人罪の故意(38条1項)が認められるか。
 予見していた因果経過と実際の因果経過が同一構成要件内で符合する場合、規範に直面していたといえるから、故意は阻却されない。
 したがって、甲に殺人罪の故意が認められる。

⑷ 以上より甲の上記行為に殺人罪が成立する。

3. 以上より、甲には監禁罪と殺人罪が成立し、両者は併合罪(45条前段)となる。

第2 乙の罪責

1. 乙がVの存在を予測したものの自動車の運転を続けた行為について、乙は殺人罪について甲の共同正犯(60条)とならないかが問題となる。しかし、甲乙間に共謀は認められないため、乙は甲の共同正犯とはならない。

2. では、上記行為について幇助犯(62条1項)とならないか。

⑴ 「幇助」とは実行行為以外の方法で正犯の実行行為を容易にすることをいう。

⑵ 乙はVを運搬する行為を行っており、甲がVを殺害することを容易にしている。したがって乙は甲の実行行為を容易にしたといえ「幇助」したといえる。
 また、乙の幇助行為と甲の行為が容易になったことにも因果関係が認められる。

⑶ 故意とは構成要件的結果発生の認識認容をいう。
 乙は、トランクの中に人がいるかもしれないと思ったこと、そして甲がVを山中に遺棄して凍死させようとしているのではないかと鋭い勘で推測しているため、Vが死ぬ可能性について認識していたといえる。そして、ひょっとしたら最悪の結果になるかもしれないと覚悟し、にもかかわらず運転を続けているので、Vが死ぬことを認容していたといえる。
 よって、乙に殺人罪の幇助犯の故意が認められる。

⑷ 以上より乙にVに対する殺人罪の幇助犯が成立する。

以上

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