11/22/2023
The Law School Times【ロー入試参考答案】
東北大学法科大学院2021年 憲法
設問1
昭和50年判決は、職業の性格について、人が自己の生計を維持するためにする継続的活動であるとともに、分業社会においては、これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有すると解している。そして、職業の意義については、各人が自己のもつ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有すると解している。
設問2
昭和50年判決は、職業の上記の性格と意義に照らし、職業の選択、すなわち職業の開始・継続・廃止における自由だけでなく、選択した職業の遂行自体、すなわちその職業活動の内容・態様の自由も憲法22条1項に定められる「職業選択の自由」として保障されると捉えた。
設問3
昭和50年判決は、職業の許可制について、法定の条件をみたし、許可を与えられた者のみにその職業の遂行を許し、それ以外の者に対してはこれを禁止するものであって、職業の自由に対する公権力による制限の一態様であるとした上で、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であると捉えている。そのため、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するとした。
設問4
昭和47年判決は、規制が国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的な目的からなされている場合には、法的規制措置の必要の有無や法的規制措置の対象・手段・態様などを判断するにあたっては、その対象となる社会経済の実態についての正確な基礎資料が必要であり、具体的な法的規制措置が現実の社会経済にどのような影響を及ぼすか、その利害得失を洞察するとともに、広く社会経済政策全体との調和を考慮する等、相互に関連する諸条件についての適正な評価と判断が必要となるとした上で、このような評価と判断は、立法府こそがその機能を果たす適格を備えているから、立法府の判断が著しく不合理であることが明白である場合に限って違憲となるものと解している。
これに対して、薬事法の適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的・警察的目的のための規制措置であり裁判所による立法事実の把握が容易であるという点で、小売商業調整特別措置法の規制とは「趣きを異にし」ているといえる。
設問5
公衆浴場法における適正配置規制の目的は、国民保健及び環境、衛生の確保という目的とともに、公衆浴場が自家風呂を持たない国民にとって日常生活上必要不可欠な厚生施設であり、入浴料金が物価統制令により低額に統制されていること、利用者の範囲が地域的に限定されているため企業としての弾力性に乏しいこと、自家風呂の普及に伴い公衆浴場業の経営が困難になっていることなどにかんがみ、既存公衆浴場業者の経営の安定を図ることにより、自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保しようとすることもその目的としているものと解される。
そして、最二小判平成元年1月20日刑集43巻1号1頁は上述の後者の目的すなわち公衆浴場法の有する社会政策及び経済政策上の積極目的を主たる目的であると認定し、最三小判平成元年3月7日判時1308号111頁は上述の両目的を併有するものと認定したために、消極目的が主たる目的であると認定された薬事法の適正配置規制とは、憲法22条1項に違反するか否かについての判断が異なったものと考えられる。