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2023年 民法 北海道大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 民法 北海道大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

北海道大学法科大学院2023年 民法

第1問

1. 代金減額請求

⑴ Bは、Aに対し、数量に関する契約不適合があるとして、代金減額請求(563条)をすることが考えられる。また、①「引き渡された物が」「数量に関して契約の内容に適合しないものであ」(562条)り、かつ、②「履行の追完が不能である」(563条2項1号)場合には、当該請求は認められる。

⑵ まず、数量に関する不適合があるかどうかが問題となる。
 当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の数量があることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた場合には、数量指示売買にあたり、その面積の不足は数量に関する契約不適合となる。
 本件では、本件土地は、その面積が250平方メートルであることが登記簿に記載されており、250平方メートルの土地であれば計画どおりのマンションを建設することができ、本件土地の代金を5000万円とすれば全体として採算がとれると判断したことから、その旨をAに伝え、Aの了承を得て、1平方メートル当たりの代金を20万円とした上で、本件土地の代金を5000万円としていることから、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の数量があることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められたといえ、本件売買契約は数量指示売買にあたる。そして、本件土地の実際の面積は、220平方メートルであったことから、面積という数量に関して契約不適合があるといえる。したがって、「引き渡された物が」「数量に関して契約の内容に適合しないものである」といえる(①)。
 また、本件では土地の売買であり、数量不足の土地を追完することは不可能であるから、「履行の追完が不能である」(563条2項1号)といえる(②)。

⑶ 代金減額請求は、「不適合の程度」(563条1項)に応じて認められるところ、本件では1平方メートル当たりの代金を20万円とする合意が認められ、本件土地の実際の面積は220平方メートルであるから、本件土地の代金は4400万円に減額されるべきである。
 また、代金減額請求権は、対価的均衡を維持しようとするものであるから、代金減額請求権の行使により、売主の何らの行為も要せずに、代金額は当然に減額されると解すべきである。

⑷ よって、Bは、Aに対し、数量に関する契約不適合に基づき、代金減額請求権を行使することができ、これによって本件土地の代金額は4400万円に減額される。

2. 損害賠償請求

⑴ Bは、Aに対し、数量に関する契約不適合があるとして、損害賠償請求(564条・415条)をすることが考えられる。当該請求が認められるためには、①「引き渡された物が」「数量に関して契約の内容に適合しないものである」(562条)こと、②契約不適合が売主の「責めに帰することができない事由によるものである」(415条1項ただし書)でないことが必要である。

⑵ 上述のように、本件では契約不適合が認められる(①)。また、Aの帰責事由の不存在を基礎づける事実は認められないため、帰責事由がないとはいえない(②)。
 したがって、Aは損害賠償責任を負う。

⑶ 次に、損害賠償の範囲(416条)が問題となる。

ア 代金減額請求権を行使しない場合、本件土地は実際には220平方メートルであるにもかかわらず、250平方メートルとして代金額が設定されているため、差額である600万円については、「通常生ずべき損害」(416条1項)として損害賠償の範囲に含まれる。
 これに対し、代金減額請求権を行使する場合、売主の負う引渡義務の内容が、現実に引き渡された物に合わせて縮減され、それに応じて買主の支払うべき代金額も引き下げられるため、売主のした引渡しは、契約の内容に適合したものであったとみなされることになる。したがって、この場合には「債務の本旨に従った履行をしない」(415条1項)とはいえず、Aに債務不履行責任は認められない。

イ 次に、得られたはずの利益である1億円が損害賠償の範囲に含まれるか。
判例は、面積の表示が売買契約の目的を達成する上で特段の意味を有しない場合には、土地の値上がりの利益は損害賠償の範囲に含まれないとする。これは、土地の個性は千差万別であって、土地の個性の一部たる面積の表示がその個性全体についての買主の評価の中で占める比重は必ずしも明らかでないから、売主は表示された面積の土地を引き渡す義務を負っているとしても、この面積があることによって買主のどのような契約目的でも達成されることまで保証しているわけではないとするものである。もっとも、416条の趣旨は、損害賠償の範囲を契約において引き受けられた利益の範囲に限定する点にあることから、①買主が売主に対し、特定の用途のために一定の面積が必要である旨を説明し、②売主が特定の契約目手に適合するものとして面積の表示をした場合には、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得られたであろう利益は損害賠償の範囲(416条2項)に含まれると解する。 
 本件では、Bは、250平方メートルの土地であれば計画どおりのマンションを建設することができ、本件土地の代金を5000万円とすれば全体として採算がとれると判断し、その旨をAに伝えているため、買主が売主に対し、特定の用途のために一定の面積が必要である旨を説明したといえる(①)。また、Aの了承を得て、1平方メートル当たりの代金を20万円とした上で、本件土地の代金を5000万円としているため、売主が特定の契約目手に適合するものとして面積の表示をしたといえる(②)。したがって、本件土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得られたであろう利益1億円は、損害賠償の範囲に含まれる。

ウ よって、代金減額請求権を行使しない場合、AはBに対し、通常損害として600万円、特別損害として1億円の損害賠償責任を負い、BのAに対する当該請求は認められる。

第2問

3. 小問(1)

⑴ Bの不法行為責任

ア 不法行為に基づく損害賠償請求(709条)が認められるためには、①「他人の権利又は法律上保護される利益」の「侵害」、②「故意又は過失」、③損害、④因果関係が必要である。

イ 本件では、Aは死亡しており、生命という権利が侵害されている(①)。また、Bは横断歩道上の歩行者に衝突しない注意義務を負っていたにもかかわらず前方不注意によりAと衝突しているため、過失が認められる(②)。また、Aは死亡しており、逸失利益等の損害が認められる(③)。そして、Bとの交通事故によるAの負傷は、放置すれば死亡するに至る程度の重大なものであったことから、注意義務違反と損害との間に因果関係も認められる。

ウ したがって、Bは不法行為責任を負う。

⑵ Cの不法行為責任

上述のように、権利侵害及び損害は認められる。また、Cは医師であり、Aを適切に治療する注意義務があったにもかかわらず、これをせずにAを帰宅させたことから過失が認められる。また、Cが適切な治療をすれば救命できた可能性が極めて高かったことから、注意義務違反と損害との間に因果関係も認められる。
 したがって、Cは不法行為責任を負う。

⑶ B及びCの共同不法行為責任(719条1項前段)

ア 共同不法行為責任が認められるためには、①各人が不法行為の要件を具備していることを前提に、②「共同の不法行為」、すなわち、客観的に見て各人の行為が社会通念上一体をなすと認められる程度にまで関連づけられているという客観的関連共同性が必要である。そして、判例は、行為自体の客観的関連共同性が希薄であっても、損害が不可分一個の場合には共同不法行為の成立を認めているため、損害が不可分一個の場合には客観的関連共同性も認められると解する。

イ 本件では、まず前述の通り、B及びCの各人が不法行為の要件を具備している(①)。そして、Bの行為は交通事故、Cの行為は医療過誤であり、行為の時・場所等が異なるため行為自体の客観的関連共同性は希薄であるものの、共にAの生命という同一の法益を侵害する行為であること、Bによる交通事故を契機にCによる治療が行われていることから、客観的関連共同性が認められる(②)。

ウ したがって、B及びCに共同不法行為責任が認められ、各自が連帯責任を負う。

イ なお、共同不法行為制度の趣旨は、個別行為を理由とする免責・減責を許さない強力な連帯責任を負わせることで、被害者救済を図る点にあるところ、寄与度に応じた減責は、上記制度趣旨に反するものであるため、許されない。

4. 小問(2)

⑴ Bの不法行為責任
 Bとの交通事故によるAの負傷は、命に別状のないものであったため、前方不注意という注意義務違反とAの死亡という損害との間の因果関係は認められず、不法行為責任は成立しない。

⑵ Cの不法行為責任
 Cは、通常では考えられないような極めて不適切な治療を行なっていることから、適切な治療を施すという注意義務違反が認められ、これと損害との間の因果関係が認められるため、不法行為責任が成立する。

⑶ B及びCの共同不法行為責任
 上述のように、Bとの交通事故によるAの負傷は、命に別状のないものであったことから、各人が不法行為の要件を具備しているものではなく、また、B及びCの行為がAの死亡という不可分の一個の結果を招来するものとはいえず、共同不法行為は成立しない。

以上

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