7/22/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
神戸大学大学法科大学院2022年 商法
1. XはY社の「株主」であり、831条1項1号の訴えの原告適格が認められる。そして本件総会の日時は令和元年5月20日であり、本件訴えはその「三か月以内」の同年6月5日に提起されているから、期間制限も順守している。よって、提訴要件を充足している。
2. Aは本件総会において議決権を行使できなかったが、この点は決議取消事由となるか。
⑴ 定款で議決権行使の代理人を株主に限定する趣旨は、総会屋などの株主以外の第三者が株主総会に参加することにより、議事が攪乱されることを防止する点にある。そのため、かかる制限は合理的理由に基づく相当程度の制限といえる。そのため、定款自体は310条1項には反しない。
もっとも、株主の議決権の行使の機会を保障する必要がある。そのため、上記の趣旨を鑑み、当該代理人に議決権を行使させても株主総会がかく乱されるおそれのない場合には、当該代理人による議決権行使を認めるべきであり、議決権の行使を認めない場合は310条1項に違反すると解するべきである。
⑵ Xは普段からビジネスの税務処理を担当していた税理士であるAを代理人としている。税理士が職業上の責任を負っていることも鑑みると、Aが株主の意思に反して議事をかく乱するような行為に出ることは考えにくく、議事かく乱のおそれはないといえる。
⑶ よって、Aの議決権行使を認めなかったことは、310条1項に違反する。したがって、「決議の方法」が「法令(略)に違反」しており、1号取消事由がある。
3. 株主が株主総会において議決権を行使することは、会社の経営に自らの意思を反映させる重要な機会である。そのため、株主の代理人による適法な議決権行使を認めないことは重大な違法であり、「違反する事実が重大でない」とはいえない。よって、裁量棄却(831条2項)は認められない。
以上