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2022年 刑事訴訟法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 刑事訴訟法 東北大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/22/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東北大学法科大学院2022年 刑事訴訟法

設問

1. 本件証言は、「公判期日外における他の者」であるVの「供述を内容とする供述」(刑事訴訟法(以下略)320条1項)であるから、伝聞証拠にあたり、伝聞例外(321条ないし328条)に該当しない限り、証拠能力が認められないのではないか。

 ⑴ 伝聞法則の根拠は、供述証拠は知覚・記憶・表現・叙述の過程で誤りが混入するおそれがあり、これを反対尋問等でチェックする機会を確保する点にある。したがって、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする供述証拠であり、要証事実との関係でその供述内容の真実性が問題となるものをいう。

 ⑵ 本件証言の立証趣旨はXの犯人性である。そして本件証言は直接犯行を目撃したという証言であるため、Xの犯人性を直接証明する直接証拠となる。よって、要証事実もXの犯人性である。そして、そして、本件証言からXの犯人性を証明するには、本件証言の内容が真実であることが前提となる。よって、本件証言は要証事実との関係でVの供述内容の真実性が問題となる。

 ⑶ したがって、本件証言は伝聞証拠に該当する。

2. では、伝聞例外は認められるか。

 ⑴ 本件証言は、W(「被告人以外の者」)の「公判期日における供述」であり、W(「被告人以外の者」)の「供述をその内容とするもの」(324条2項)に該当する。そのため、324条2項が準用する321条1項3号の要件を充たす必要がある。

  ア 321条1項3号の供述不能事由は例外的に被告人の反対尋問権の保障を犠牲にしてでも伝聞証拠を用いるべき必要性を基礎づけるものであるから、相当程度継続していなければならない。本件において、Vには中度の知的障害があり、現時点において犯行当時の記憶が全くない状態であるため、「精神もしくは身体の故障」があるといえ、供述不能事由が認められる。

  イ 本件証言は、犯行を直接目撃したという証言であり、直接証拠となる。したがって、「犯罪事実の存否に欠くことができない」証言である。

  ウ 特信状況は、その供述自体に存する絶対的特信情況を意味し、供述時の外部的付随事情を基準としつつ、外部的付随事情を推認する一資料として供述内容も考慮できると解するべきである。
    本件では、たしかにVがナイフで刺される場面はSに与えるインパクトが大きく、記憶の過程で誤りが混入するおそれは小さい。また、WはSを担当している職員であるから、SがWに嘘を言う動機はないため表現叙述の過程でも誤りが混入しているおそれも小さい。しかし、XとSに認識があったかどうかが不明であり、Xでない人物がVを刺した可能性もある。そのため、ナイフを刺した人物をXと知覚した過程で誤りが混入している恐れがある。したがって、SがXとの面識があった場合など、Sがナイフを刺した人物をXと見間違いがないような状況でない限り、絶対的特信情況は認められない。

 ⑵ したがって、321条1項3号の要件を全て充たす。

3. 以上より、SがXと面識があった場合など、ナイフを刺した人物をXであると知覚する過程に誤りが混入しているおそれがない場合に限り、伝聞例外として本件証言の証拠能力は認められる。

以上

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