【令和5年・司法試験合格体験記 Vol.4】刑事系14位で合格 ONとOFFの切り替えをハッキリと 棚橋さん(慶應ロー修了)
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【令和5年・司法試験合格体験記 Vol.4】刑事系14位で合格 ONとOFFの切り替えをハッキリと 棚橋さん(慶應ロー修了)

5/1/2024

司法試験合格者に受験の体験談を聞く本連載・令和5年ver。第4回目は、早稲田大学政治経済学部を経て慶應ロースクールに入学し、修了後に司法試験に一発合格した棚橋佑介さんです。

司法試験合格を目指したきっかけや、iPadを利用した勉強法について話を聞きました。(ライター:後藤/The Law School Timesライター)

今回の合格者

棚橋佑介(たなはし・ゆうすけ)さん/令和5年司法試験合格。早稲田大学政治経済学部を卒業後、慶應義塾大学大学院法務研究科法曹養成専攻(既修コース)に入学。2023年3月に修了し、同年の司法試験を受験して合格




✅慶應ロー・既修コース

✅一発合格

✅刑事系14位


就活を通じてビジネスと法の繋がりに気付く

──司法試験合格を目指した理由を教えてください

学部時代は経済を学んでいたのですが、就職活動を通して経済と法が切り離せないものだと気付き、ビジネスに携わるという自分の目標を考えた際に法についても専門的な知識を得る必要があると感じたので、司法試験の受験を決意しました。

法曹三者の中でも裁量が大きく、働き方に自由がきく点に魅力を感じ、弁護士になることを選択しました。

──棚橋さんは政治経済学部出身ですが、法学部出身の人に比べて不利であると感じる場面はありましたか

大学受験では現代文が得意であり、司法試験という長い文章を書く試験に向いているのではないかと感じていたので、不安はそこまでありませんでした。

また、大学の同じ学部に予備試験を目指している人が全くいなかったため、情報収集に苦戦していたのですが、偶然中学時代からの友人である晋川くん(編集部注:The Law School Times編集長)が同じタイミングで司法試験を目指していたので、ロースクールという進路や勉強方法について教えてもらいました。 
 


iPadを活用して情報を一元化

──慶應ローに入学してから司法試験まで約2年間、長期的な勉強スケジュールは立てていましたか

僕の性格上、長期的なスケジュールで勉強計画を立てると、失敗したときに落ち込んでしまうと思っていたので、計画をしっかり固めるというよりは、そのときにやりたいと思った科目をやりたい分だけやるスタイルで勉強していました。

インプットの勉強が好きだったので、気分が乗らないときには、いつも以上に自分のやりたいこと、具体的には、論証を覚えることや教材のカスタマイズに時間を使っていました。


──好きな科目と他の科目の偏りについてはどのように調整していましたか

勉強計画の偏りを矯正する上で、ロースクールがとても役立ちました。

得意な刑事系科目に勉強時間の3割程度を割いていましたが、ロースクールではもちろん全科目を満遍なくできるようにしなければ進級できないので、刑事系以外の科目も最低限やらなければならず、結果的に全科目にバランスよく取り組むようになっていました。

──利用していた予備校・教材は何ですか

予備校は、ロー入試の段階からずっと伊藤塾をメインで利用していましたが、労働法については評判の良かったアガルートを利用しました。

市販の教材は、商法や刑法、刑事訴訟法といった科目で基本書や演習書を適宜利用し、全科目で『趣旨・規範ハンドブック』(辰已法律研究所)と『司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本』(辰已法律研究所、以下『ぶんせき本』)の全年度分を使っていました。

棚橋さんが使用していた教材一覧



──ロースクール入学から司法試験受験まで、日々どのように過ごしましたか

在学中受験資格制度が始まる前の受験生で、ロースクール入学時点では司法試験まで2年ほどあったので、2年次の平日は1限の授業に出席して13時ごろまで授業を受けた後、19時くらいまで自習室で自習し、休日は思い切って遊ぶ生活をしていました。このときにしっかり息抜きをしていたので、直前期は切り替えて勉強に集中することができました。

3年生になり、司法試験まで1年となって、受験生だという意識が徐々に出てきたので、2年次より少し勉強量を増やしました。具体的には、平日は9時にロースクールへ行き、授業を受けたあと21時ごろまで自習室で勉強し、休日も午前中にはロースクールに行って、21時ごろまで自習室で勉強していました。

ロースクールを修了してから司法試験まで4カ月弱ありますが、このあたりで危機感が増してきたので、往復1時間の通学電車の中でも、辰已法律研究所の短答アプリで勉強するようにしました。


──ロースクールの授業をそのように試験対策に生かしていましたか

ロースクールで授業を受けて、理解が深まった部分については『趣旨・規範ハンドブック』の論証を書き換えていました。

ロースクールの授業は、担当教員が興味を持っている分野が重点的に扱われることもあるのですが、司法試験も学者が作成しているためか、ロースクールの教員の興味と出題内容が似通うことが多々あります。授業で知らない分野があれば、出題された場合にどのように回答するかを意識して復習していました。

──勉強法で工夫したことはありますか

iPadを活用していました。
iPadの良いところは、多くの教材をiPadに集約することで、勉強中に突然「この科目のここを見たい」となったときに、簡単にその科目のそのページにいけるので後回しにせずに済む点です。また、パソコンとiPadの2台を同時に利用することで、その行き来がさらに楽になります。

iPadを活用していて一番良かったと思ったのは、iPadは紙の教材と比べて、小さくメモをしたり切り貼りしたりする手間が格段に少ない点です。情報を一元化したオリジナル教材を作るのにかかる労力が格段に減り、その分勉強に時間を使えるので、iPadを利用した勉強を強くお勧めしています。

<棚橋さんが執筆した【iPad活用勉強法】の記事はこちら

『趣旨・規範ハンドブック』をiPadに取り込み、書き込むことで一元化テキストを作成


iPadとMacBookを併用して、より効率を上げていた



──過去問の使い方を教えてください

過去問をちゃんとやり始めたのは司法試験の半年前くらいからで、最初は週2〜3問やっていたのですが、4月末になって間に合わないと思ったので、そこから1日3個の答案構成をするようになりました。本番までになんとか全年度分を1周できました。

過去問の学習で気をつけていたのは、やって終わりではなく、解いてみて分からなかった部分をテキストにまとめて、後から参照できるようにすることです。単発の知識ではなく「何年度の何問目でこういう考え方を使った」という考え方を『趣旨・規範ハンドブック』に一元化し、普段の勉強でも過去問を解いたのと同様の効果を得られるようにしていました。


自主ゼミを活用 刑事系14位の秘訣は

──学生による自主的な勉強会・自主ゼミは実施しましたか

答案を見合って意見を出し合うことを目的として、晋川くんと、同じくThe Law School Timesの みねくん(予備試験合格体験記 Vol.2)と3人で実施していました。

直前期に互いに過去問の答案を見合うことで色んな発見があったので、優秀な人と自主ゼミをするのは効果が高いと思います。

ロースクール3年次、期末試験前に自主ゼミをしている様子


──司法試験当日の過ごし方を教えてください
初日の最初の科目は選択科目(労働法)で、とても難しかったので「これはヤバい」と思いましたが、同じ教室にいた友人と「ヤバかったね」と言い合うことで、その後にある公法系科目に響かないように、心を落ち着かせていました。

2日目の民事系科目でも、民法の設問2や商法民訴が期待通りにできず、一方で周りの友人は普通に書けていたと感じたので「これは落ちたかもな」と思いました。2日目の試験が終わった後、友人や家族とゆっくり話して、少しでも精神的なダメージを和らげるようにしました。2日目が終わると1日だけ休憩日があるのですが、そこでたくさん寝たので、続く刑事系科目や短答試験には集中して取り組むことができました。


──刑事系14位で司法試験に合格しています。高順位の理由はなんでしょうか

刑事系は、当てはめが特に重要な科目なので、上位を狙うには記述量が求められると思っており、僕は書くのが速いタイプでもなかったので、答案用紙8枚を埋め切るために答案構成をしませんでした

そして当てはめでは、ただ規範に沿って問題文の事実を引用するのではなく、重要論点については当てはめの視点や使える表現を『ぶんせき本』や自主ゼミで学んでストックし、自分でも使えるようにしていました。

自分の使う学説を選ぶに当たっても、問題文の事情をより多く拾える学説を選択できるように、学説はたくさん覚えました。

答案を書く際は採点者に伝わりやすいように、綺麗な日本語で表現することを意識していましたね。答案の文章は、上記のみねくんとの自主ゼミで、より簡潔で的確な表現がないか確認していました。


周囲と比べず、自分が継続できるペースで勉強を

──受験生にメッセージをお願いします
1つ言いたいのは「再現答案はマジで盛っている」ということです(笑)。僕もぶんせき本を使って勉強していたので、最初の頃は再現答案を見て「こんなに書けないと合格できないのか」と思って絶望していましたが、合格した今思い返すと、あれは確実に盛られているので、気にせず勉強していけば大丈夫です。

一番大切だと思っていることは、自分のペースで継続して勉強することです。自分の能力に合わない量の勉強をすると、必ずいつか限界に達して大きな反動がきてしまいます。人がこれだけやっているからと比べるのではなく、自分が継続してできる最大限を維持するのが大切です。たまにはゆっくり遊んで息抜きをしながら、自分が継続して勉強できる時間を見つけていくことが合格への近道である人間もいます。焦って自分のペースを崩さないようにしましょう。

司法試験は情報戦でもあるので、一人で抱え込まず、友人と話す時間も大切にすると良いと思います。

司法試験受験生時代によく利用していたカフェ



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司法試験合格体験記 Vol.2

司法試験合格体験記 Vol.3

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