
2/23/2026
司法試験合格者に受験の体験談を聞く本連載・令和7年ver。 今回は、慶應義塾大学法科大学院(既修者コース)在学中、令和7年司法試験に合格した藤田倖太朗さんです。
高校時代は偏差値30台という状況から猛勉強の末に早稲田大学法学部へ逆転合格。その後、「試験そのものを倒す」という感覚で司法試験に挑みました。
ポモドーロ・テクニックや散歩を駆使した徹底的な効率化と、「論証暗記」への特化戦略でロー入試は全勝。
しかし、その後の「確信歩き(油断)」により、直前の模試では不合格推定をとるという波乱万丈な受験生活。 最後は「ウサギとカメ」のウサギ側として、冷や汗をかきながらも合格を勝ち取った藤田さんの、戦略的で、反面教師的な合格術に迫ります。 (ライター:晋川陸弥/The Law School Times)

藤田 倖太朗(ふじた・こうたろう)さん
令和7年司法試験合格
2025年3月慶應義塾大学大学院法務研究科(既修者コース)修了。
大学受験での全落ち・浪人を経て早稲田大学法学部に入学。
大学3年夏から本格的に学習を開始し、慶應ロー既修コースへ進学。
在学中に予備試験短答式試験に合格(論文は不合格)。
司法試験総合順位は1400位台。
✅ 偏差値30からの大学受験逆転合格が原点
✅ 25分勉強+5分休憩&散歩の「ポモドーロ」活用
✅ 「確信歩き」による油断と直前期の猛烈な挽回
──合格おめでとうございます。まずは率直な感想をお願いします。
ありがとうございます。先日届いた成績表でわかったのですが、順位は1400位台後半で、父には大爆笑されました(笑)。短答も109点で、論文も刑法で論理矛盾してしまいD評価をとるなど、かなりギリギリの戦いでしたが、受かってよかったです。
──そもそも、弁護士を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
実は、もともとは「絶対に弁護士になんてなりたくない」と思っていました。
というのも、中学生の頃にドラマ『リーガル・ハイ』を見て、新垣結衣が演じるアソシエイト弁護士の黛先生が、朝から晩まで本を読んで勉強している描写があり、「一生勉強し続けるなんて無理だ」と思ったからです。
司法試験を目指し始めたきっかけは大学1年のコロナ禍です。浪人して入った早稲田では、校歌を歌って騒ぐというキャンパスライフを送ろうと思っていたんですが、入学式もなくなり、いきなり夢を絶たれ、家で寝そべっているだけの生活に嫌気が差しました。
法学部に入ったし、家の中でできる「デカいこと」はないかと考えた時に、司法試験が浮かびました。
──そこからすぐに勉強を開始されたのですか?
最初は伊藤塾を考えていましたが、費用が高いので断念し、別の資格スクエアという予備校に入りました。ただ、講義動画を少しだけ適当に見てから、結局やらなくなり、100万円近くをドブに捨ててしまいましたね。

本気になったのは大学3年の夏です。就活を考えた際、一度司法試験を目指したことを思い出し、何十年後か先や死ぬ前に「あの時諦めたな」と後悔したくないと思ったんです。一度目指したなら最後までやりきりたいと思って再始動しました。弁護士になるというより、試験自体を倒すことが目的でした。
大学受験での成功体験もかなりあります。
僕は高校時代、偏差値35程度の学校で、高1の秋には偏差値30しかありませんでした。そこから現役時はMARCHや武蔵大学も含め全落ちるという経験を経て、浪人での猛勉強の末に早稲田大学法学部に合格しました。この逆転合格の成功体験でドーパミンが出る感覚を知ってしまい、完全に試験中毒になっていたっていうのもあると思います。
──具体的な学習スタイルについて教えてください。
大学3年の夏にアガルートに入り直してからは、効率を重視して、また猛勉強を始めました。集中力を維持するために取り入れていたのが、「ポモドーロ・テクニック」です。25分勉強して5分休憩するというサイクルをひたすら繰り返します。直前期に追い込まれた時は、このサイクルを1日中回していました。2時間(4セット)終わったら、休憩として散歩に出るのがルーティンでした。
大学受験の浪人時代から、集中力が切れたら散歩か15分の仮眠をとると決めていました。ローでも、勉強の合間に15分〜20分ほど、三田キャンパスの正門から出て東京タワーの方へ向かい、イタリア大使館を回って戻ってくるコースをよく歩いていました。歩きながら頭を整理するのが一番のリフレッシュでしたね。
──教材の使い方はどうでしたか?
家からローまでの通学時間が片道2時間あったので、隙間時間を活用するために、入学してすぐiPadに完全に切り替えました。重たい基本書や問題集を持ち歩くのは不可能なので、六法以外のすべての教材(短答過去問、論証集、基本書など)を裁断・スキャンしてiPadのGoodnotesに入れていました。これなら満員電車の中でも、立ったまま短答の勉強ができます。
これのおかげで、1日少なくとも3時間は必ず短答の勉強ができるようになりました。

──ロー入試対策はどのように進めましたか?
とにかく時間がなかったので、爆速でインプットを終わらせました。アガルートの民法基礎講義などは、最初の2週間で1周しました。カフェでも、自習室でも、電車の中でも、倍速再生で1日中講義を聞く生活です。
理解度は正直10〜15%程度でしたが、まずは全体像を掴んで早く問題演習に入りたいという一心でした。年内には重要問題習得講座(重問)を1周させました。
ただ、それでも全然できるようにならず、焦りました。そこでロー入試の2〜3ヶ月前、「結局、試験は論証じゃないか?」と気づいたんです。
──そこから論証暗記に特化したわけですね。具体的な暗記法を教えてください。
単に文言を丸暗記するのではなく、以下のプロセスを徹底しました。
まずは場面の理解です。その論証が使われる典型場面はどこか、問題の所在を確認します。
次に内容の理解。論証の内容を読み、意味がわからなければ基本書を辞書的に引いて理解します。基本書は、同じことを別の言葉で説明してくれるので理解に役立ちます。
最後に、自分で思い出す。論証集を閉じて、頭の中で答案構成から論証の吐き出しまでを空で再生しました。「問題提起→理由付け→規範→あてはめ」の流れを脳内で完全に再現できるまでやります。この作業が一番負荷が高く、脳が疲れすぎて、寝ている間も夢の中で問題を解いてしまうほどでしたが、読むだけの100倍記憶に定着しました。
──その成果はロー入試で出ましたか?
出ましたね。中央ロー入試では、試験中に試験監督のおばちゃんと談笑する余裕すらありました。

また、慶應ロー入試の直前には、The Law School Timesが主催していた模試(編集部注:当時は過去問起案会)を受けたのですが、そこで答案を添削してもらった慶應ローの先輩に、「これなら絶対に受かる」と言ってもらえたことで自信がつきました。本番でも、問題を見た瞬間に「あ、これあの論点だ。条文指摘して終わりじゃん」とすべての道筋が見え、合格を確信しました。
──ロー入学後の生活について教えてください。入学早々、就活イベントがあったそうですが。
ロースクール合格後に、The Law School Times主催の「ロースクールスタートダッシュ大宴会」に参加しました。そこで「就活はとにかく早くから動くこと、証明写真にはお金をかけるべきなど、教わったのが大きかったです。これがなかったら、何も知らないまま、就活は失敗してたと思います。
実際、入学式直後にクラスの新入生同士で飲み会に行こうとしていたところ、ちょうど法律事務所のサマークラーク募集開始を誰かが見つけ、そのまま「一度解散して、まずESを出してから集合!」となって、それぞれ自宅に戻ってESを書き上げたことがありました。この意識の高さはLSTimesのイベントのおかげです。
──予備試験対策とローの勉強の両立は大変だったと思います。
正直かなり大変でした。既修2年の前期は、授業、期末試験、予備試験短答、サマークラークのES作成がすべて重なり、人生で一番きつかったです。
往復の通学時間(約3時間)と授業中の内職時間はすべて予備試験の短答対策。一方で、自習室などで腰を据えて勉強できる時間は、ローの授業の予習復習を通じて予備試験の論文対策をしました。
結果、予備短答は合格最低点で合格、ローのGPAも3.0を維持するという、最高の成果を出すことができました。
──その後、予備試験の論文式試験はどうでしたか?
ここでウサギとカメのウサギが出てしまいました。

予備の短答に受かったことと、慶應ローでの成績が悪くなかったことで、「自分は受かる」と過信してしまったんです。
夏休みは彼女と遊びまくり、予備論文直前までインターンを詰め込み、試験前日にも弁護士の先生と飲みに行く始末でした。結果、ミスを連発し、順位は600位後半で不合格でした。もしあの夏休みに、ロー入試の時と同じ熱量で勉強していれば受かっていたと、今でも後悔しています。
──予備論文不合格後、司法試験に向けた対策はどうされましたか?
ここでもまだ懲りていなかったんです(笑)。予備論文で600位後半なら、司法試験は余裕で受かるだろうと高を括り、いわゆる確信歩きを始めました。予備論文からの解放感もありロー2年の秋から冬にかけても遊び呆け、周りが3月のTKC模試に向けて勉強している中、僕は準備が間に合わず5月受験に先送りしました。
──その5月の模試の結果はどうでしたか?
6月に返ってきたんですが、衝撃の不合格推定でした。
これまでロー入試、期末、予備の結果などから「受かるよ」と言われ続けてきたのに、直前期の最後の最後で「落ちるよ」と突きつけられた感じです。さすがに顔面蒼白になりました。
そこからはまた、猛勉強です。過去問をひたすら解き、出題趣旨・採点実感を読み込み、友人に答案を見てもらって修正しました。最後はやはり、信頼していた「論証集」への一元化と暗記に立ち返りました。
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──直前期に役立ったものはありますか?
慶應ローの学習支援ゼミです。民事訴訟法を取っていましたが、このゼミだけは、調子に乗っていた僕の尻を叩き続けてくれました。先生の作成した資料や答案が非常にわかりやすく、直前期の民訴対策はこれに救われました。先生から「君は受かる可能性が高いけど、油断するな」とメールをもらったことも、最後の一押しになりました。
──司法試験当日の手応えはどうでしたか?
成績は先ほど言った通りギリギリだったのですが、主観的な手応えは相当ありました(笑)。
1日目の倒産法と憲法は、過去問で見た論点や誘導に乗れた感覚があり、これは一桁順位もありえるぞと本気で思っていましたね。2日目の民法も、学部時代にやった論点が出たと思い込み、完勝したと感じていました。最終日も「全科目できた」と確信し、母と祝杯をあげてしまったほどです。
──実際の結果とのギャップは?
蓋を開けてみれば、民法は登場人物を取り違えて読んでおり、設問を丸々落とす大ミスをしていました。刑法も、共同正犯と幇助で論理矛盾を起こしており、評価はDでした。 主観的には「完璧」でも、客観的にはボロボロだったんです。それでも、民事訴訟法がA評価で救われるなどして、なんとか総合1400位台で滑り込みました。
ただ、僕は試験期間中Xを消していたので、出来ていないことを一切知らず、むしろ出来たと思い込んで試験を受け切ることができました。これは本当に良かったと思います。
──合格発表の瞬間について教えてください。
発表前日は友人と朝まで飲み明かし、二日酔いの状態で法務省の掲示板へ向かいました。一番乗りで待機し、自分の番号を見つけた瞬間は、報道のカメラに向かって喜び叫びました。その瞬間の写真が神戸新聞に使われたのも良い思い出です。

──最後に、受験生へのメッセージをお願いします。
僕の合格体験記は、コツコツ努力する「カメ」ではなく、途中でサボって最後だけ焦る「ウサギ」です。 メッセージとしては、「油断するな」ということに尽きます。僕みたいなタイプは、慶應や東大ローに受かったり、予備試験でいいところまで行ったりすると、どうしても自分は受かるという自信から確信歩きをしたくなります。その慢心は気持ちいいし、かっこいいことのように思えますが、実は一番ダサくて危険なことです。
本当にかっこいいのは、最後まで必死に勉強し続けた人です。 自分の実力を客観視するために、過去問を解いて現実を知ること、そして他人の答案を見て自分の立ち位置を把握することを怠らないでください。 僕のように冷や汗をかきたくなければ、最後まで「カメ」でい続けてください。応援しています!

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